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ESSAY・BLOG

2020.04.28

踊るキューバ03「ハングリー精神」


写真と文・小町剛廣

(この原稿は2001年に連載していたものです。
当時の臨場感を出すためにそのまま掲載しております。)

週刊 ジャーフル・連載第3回

ーハングリー精神ー

「こいつも必ず強くなるだろう」

こいつとは、この写真の男の子のことである。
あえてこいつと言わせてもらっているのは、
キューバで撮り続けている写真の中で最も好きな写真の一つ。
私はこの少年の大ファンだからである。

キューバという国は、いつもオリンピックが近づいてくると注目される。

去年のシドニーオリンピックでも、世界第9位のメダル獲得国である。
人口の割合でいくと、もしかしたら世界一ではないか(ちなみにキューバの人口1100万人)。

以前、私はハバナ市内にあるボクシングジムを訪ねた。

そこは「あしたのジョー」という漫画に出てくる
丹下ジムと変わらないようななりをしていた。

リング上のマットは、ニヤ板に毛布が敷いて
あるだけで、とても固そうである。

サンドバッグも、数に限りがあり、
その代わりにダンプのタイヤがたくさん吊されていた。

ジムでは、何かに取り憑かれたように、サンド
バッグを打っている者や、シャドーボクシングで汗
を流している者たちが大勢いた。

その中でも、私が気になったのは、他の
人に比べてすごく軽そうサンドバッグを打って
彼の姿であった。

セメントでできているであろう床の上を、
あたかもトランポリンのように軽快に跳ねている
彼のバネの強さにびっくりした。

気がついたら、シャッターを夢中になって
切っている自分がいた。

キューバのボクシングは凄まじい。

日本からボクシングジムからの
撮影取材が来ると聞いて
ボクシングジムオOBの強者、
ウエイトリフティングのOBたちも駆けつけてくれた。

彼らと多少話をしながらシャッターを切っていると
「以前、日本はボクシング大国だったのに最近はどうした?なぜ?」

私はボクシングの専門家ではないので
確かなことは言えないが、
よく世間一般的に言われている、
ハングリー精神が薄れてきたからという
言葉を受け売りし、そう答えた。

すると彼らは、「メシを食わないことか?」
と言ってきて、
「私たちは今、全員ハングリー精神です」
と付け加えた。

さらに、
「キューバ人は今、全員ハングリー状態なので、
あえて精神という言葉は使わない」
と言った男の顔が、わが日本を
代表するボクサー・ガッツ石松とダブって見えた。

彼も精神じゃなく、ハングリーそのものだったのだろう。

ちなみに、写真の彼に撮影後インタビューすると、彼は言った。
「まだ朝食とってません。腹へった…」

     
マタニティフォト専門スタジオモーツァルト
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