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ESSAY・BLOG

2020.04.28

踊るキューバ08「ニシモト」


写真と文・小町剛廣

(この原稿は2001年に連載していたものです。
当時の臨場感を出すためにそのまま掲載しております。)

週刊 ジャーフル・連載第8回

ーニシモトー

「チーノ!」

いきなり路上で声をか けられた。
日本人がキューバの街中を歩いていると、
必ずといっていいほど、こう呼ばれる。

チーノとは、スペイン 語で中国人という意味だが、
キューバ国内に約1%の中国系キューバ人
が住んでいて、彼らもそう呼ばれている。

私が子供の頃、家の近所に外国人がいると、用
もないのに「外人! 外人!」と声をかけたのを思い出す。
別に一切悪気はなく言っていた。
キューバ人もきっと同じような思いで声を
かけてきているのであろう。

ハバナをぶらぶらしている時、面白い日本人と
知り合いになった。
彼の名はNといい、彼とは今でも付き合いがある。

私に声をかけてきた時、
隣には感じの良い奥さんもいた。
奥さんは控えめな感じで何も話さず、
ひたすら私とN氏の話にニコニコしているだけである。

彼は私よりも早くからキューバに興味を持ち、
ハバナに住むようになるまでのいきさつを話してくれた。

キューバ人の踊りが素晴らしいとか、
笑顔がいいとか、景色がいいとか
…ではなく、
ひたすらキューバ人女性だけを追い求め、
気づいたら住んてしまった、ということであった。

彼の話は欲望にストレートで、日本人にしては
珍しい奴だと思った。

時には逆光でまぶしい、くらいの金髪女性のこと、
お尻がキュッと上がったラテン系特有の女性のこと、
激しい腰の振りをする女性のことなど……
私も全くもって同感であった。

彼は、ハバナの街中を走ってる古いアメ車を
日本へ輸出しようとして失敗したり、
仕事もいろいろと試みたようだ。

極めつけは、マイアミで安いスニーカーを200~300足くらい
バッグに詰め込みキューバで売ろうとしたが、
税関で見つかり、

「お前、商売目的だな」
「いえ、全部自分で履くためです」
「そうか、それなら一足だけ残して、あとは置いていけ。
他の靴が履きたい時はここに来れば履いている物と交換してやるぞ」

と言われ、泣く泣くあきらめたことであった。
「何でスニーカーみたいな大きい物を
わざわざ持ち込んで商売しようとしたの?」

と私は尋ねたが、彼はその問いには答えず、
「でも、いきつくとアジア人だよな!」
と、奥さんを横目で見ながら言い、時間を気にしているようだった。

私もそろそろホテルヘ 戻ろうと思い、
彼に「じゃあまた」と言って握手をした。

奥さんにも握手して別れようとした瞬間、彼女
は私の頬にキスをして、
「アディオス!」と言った。
……何と彼の奥さんは生粋の中国系キューバ人であったのだ。

     
マタニティフォト専門スタジオモーツァルト
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